
先般、一般社団法人防災教育普及協会主催の防災教育指導者育成セミナーに参加してまいりました。セミナーでは東京大学地震研究所教授の平田氏による「地震災害の正しい知識と備え」と題したレクチャーのほか、板橋区や世田谷区にて小学校校長を歴任された矢崎氏による「学校における効果的な地震防災教育の実践」について講義がなされました。なかでも防災教育の第一人者として活躍している矢崎氏におかれましては、従来の避難訓練を見直し、より実践的な訓練の必要性を訴え、教育現場でのご自身の実体験を中心に話が進みました。従来の避難訓練の課題として、サイレンに関しては本当の地震時には放送の前に地震が起きていることや揺れが大きいと放送ができない点、また机の下に隠れるという初期行動では、地震に遭遇する場面が教室に限ったものではない等、あらゆる場面を想定し、より実情に応じた避難訓練の改善を実践されております。具体的には、避難訓練の合言葉を「落ちてこない」「倒れてこない」といった低学年でも理解できるようなシンプルなものにし、日頃より様々な場所で、上から物が落ちてこない、横から物が倒れてこない場所を探す訓練をなさっています。実際の訓練は訓練放送後、まずは安全な場所、すなわち落ちてこない、倒れてこない場所に身を寄せ、地震が収まったことを想定して、教室や工程に集合して安否確認をするとのことです。またこの訓練は、落ちてこない、倒れてこない場所を理解した後に、抜き打ちでの実施がなされています。過去には、日本海中部地震もまさにこのとおりでありましたが、お昼の給食配膳中であったり、水泳の授業中、登下校時の通学中など多肢に渡り実践され、より深い危機管理能力を身につけさせております。なぜ矢崎氏がこのような実践的な避難訓練を実施するようになったかというと、災害発生時に学校に職員がいる時間は、年間245日×8時間として1960時間となり、年の約22%しか責任が持てないという現状があったからです。またその時間も実際には授業等の指導にあたっているため常時つきっきりで見守ることも現実的ではないために、自分の命を自分で守る防災教育が必要であるとの考えに至ったようです。つきましては、このような事例を踏まえ当市においても小中学校において同様の抜き打ち避難訓練を導入できないかどうか当局のご所見をお伺います。

佐藤議員の減災・防災対策の強化のうち、小・中学校における抜き打ち避難訓練の実施についてお答えいたします。各学校においては、学校安全計画に基づき、自身や津波等の自然災害や火災を想定した安全教育を、社会科や保険体育等の教科で実施しております。また、災害時の正しい行動や避難の仕方等の安全指導については、通常の避難訓練や学級活動において全小・中学校が取り組んでおります。抜き打ち避難訓練については、東日本大震災等をきっかけに始めた学校もあり、平成28年度に実施または実施予定の小学校が5校、中学校が1校となっています。児童生徒に判断力や行動力を身につけさせることをねらって、授業中だけでなく、休み時間、清掃時間、公害活動中等、様々な時間や場所で行われており、突然の災害時に自分の命は自分で守ることができるよう実施しております。一方、低学年児童の過度な不安等を危惧し、抜き打ち避難訓練を実施していない学校もあります。教育委員会としては、抜き打ち避難訓練の実施については効果があると考えておりますので、先進事例を紹介し、実施の拡充に務めてまいります。